行き詰まる原子力行政を鑑みて

日本政府が主導してきた大型原子力発電所の海外への輸出はすべて白紙となり、大型原子炉の建設は無くなった。今日まで世界をリードしてきた三菱・東芝・日立の原子力御三家の技術力は低下する。日本の技術はやがて中国・ロシアの後塵を拝することになる。大型原子力発電所を海外に輸出するという我が国の国際経済戦略は目論見が外れて、修正を余儀なくされる。

我が国が国是としてきた核燃料サイクルは「もんじゅ」が廃炉になり、青森県六ケ所村の再処理施設の稼働もままならない。たとえ、六ケ所の工場が稼働したとしても世界の情勢変化の中でプルト二ウムの管理は厳しくチエックされることになる。さらに ウランとMOX燃料の経済性も疑われる。そうとなれば、六ケ所の再処理施設を動かす理由が見当たらなくなり、核燃料サイクルは断念せざるをえない。投下してきた膨大な投資が負債になる。

パリ協定を守るために資源小国である我が国は再生エネルギーの拡大に取り組まなければならないが、原子炉発電所から発生する使用済み燃料の問題は残る。SMRなどの小型原子炉の開発に乗り出すにしても、軽水炉の技術延長では使用済み燃料の課題を克服することはできない。

服部禎雄氏がUSパテントを持つ小型原子炉は乾式処理・金属燃料を使用する高速炉であり、安全炉であり、負荷追従という観点では原子力電池である。そして、何よりもアメリカのEBR-2 ですでに実証された技術であることに意味がある。溶融塩炉などさまざまな技術はあるが、世界の方が先行していて我が国がトップランナーにはなりえない。

奇跡的に乾式再処理・金属燃料という技術は日本に移転され、「もんじゅ」開発の陰で副概念として眠ってきた。食料とエネルギーは国の根幹。この技術こそ、我が国のエネルギー問題を克服し、国際経済戦略を担うことのできる技術である。将来の日本の浮沈を左右する技術と言っても過言ではない。国家プロジェクトの位置付の下、速やかに推し進めるべきものだ。来年度予算案に調査費が計上されたことは実に喜ばしい(下図)。服部氏は85歳。技術は人と共にある。

金龍

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